藤まつり投句会
2024年4月21日~5月6日の笹屋ホテル「藤まつり」期間中にご来館頂きましたお客様を対象に
投句会を実施いたしました。
俳句部門、短歌部門より入選作品を発表します。
入選の皆様、おめでとうございます。
兼題は「藤」「4月の季語」「5月の季語」のいずれか
宮坂静生 選
俳句部門
特選
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これが幸巨木の藤の花盛んもと江 様
<評>
樹齢がどれくらいだろうか、巨木の藤が満開。藤房をゆさゆさ垂らし、見るからに貫禄がある。これほどの藤に出会うだけでも幸せいっぱい。藤を讃えながら最高の時間を過ごせた喜びを噛みしめている。感動を率直に表現し、一句に迫力がある。
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藤まつり笙の響きの旅祈願石坂 千春 様
<評>
藤まつりを盛んに盛り立てるために雅楽の演奏がある。優雅この上ない笙の笛の演奏がゆかしい。その響きをしみじみと楽しんでいると、故郷を離れて遠く旅にいる身の安らかならんことを祈って貰っている快い気分になる。旅愁ひとしおの作。
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夫と吾旅の終ひの藤の宿青柳 洋子 様
<評>
初めに「夫と吾」とお二人を確かめ合うように詠うことによって、仲の良さがしみじみと伝わる。旅も終わりと平凡ないい方ではなく、「旅の終ひ」と文語表現のやさしく円やかな味わいが旅情を醸し出す。そこは春も終わりの藤の宿。巧みな作。
秀逸
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還暦を迎えて見上ぐ藤の花蟻沢 多佳子 様
<評>
60年、還暦を迎えた。長い人生、ともかく大事な節目である。折から、見事な藤の盛りの花房を仰ぐ。これからの後半、この藤の花の勢いにあやかりたいものだ。
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七人の音色のごとく夜の藤ゆき 様
<評>
7人による雅楽の演奏でも行われているのであろうか。夜の藤は昼とは違い、七色の音色が藤棚の全体から匂うように聞こえてくる幻想にとらわれる。優雅な作。
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湯けむりが霞める先に藤の花野沢 大祐 様
<評>
露天風呂にでも浸かっている風情が詠まれている。湯けむりがもうもうと上がり先が霞んでいる。そこに藤の花。漂うような薄紫の藤の花がいっそう妖しい。
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藤の香にさそわれ夜半に逢いに行く関 茂男 様
<評>
「光君の時代」でも彷彿とさせる逢引の句である。夜の藤の甘い香に誘われてと出来過ぎな場が用意され、ザックバランな現代、かえってほんとかなと思わせる。
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藤の香に古城の門を思い出す市川 薫 様
<評>
昔を偲ばせるようなうっとりとした藤の花の香から、「小諸なる古城のほとり」と藤村の詩を思い浮かべる。信濃はハイランド、高原の街。藤もとびきり芳香を放つ。
短歌部門
特選
秀逸
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信濃路の宿の窓辺に咲き薫る樹齢尊き藤の花房高木 真織 様
<評>
信濃路を初句に捉えた懐かしいリズムが快い。藤の巨木が悠然と滝のように薫らせる花房。樹齢を経た藤褒めの一首として見事である。
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旅に来て我を待っての藤の色心酔わせる笹屋の湯まで菊池 恵津子 様
<評>
藤の花が旅人の私を待っていてくれた。その花の色よ香よ、私を酔わせてくれる。その上、笹屋の湯は絶品。ありがとう藤よ出湯よ。