

10月に入ってようやく晴れの日が続き、屋外でのレポートができるようになりました。
今回は何度か行っている東御市の湯ノ丸高原にある「池の平湿原」のレポートです。
紅葉の見頃はまだ先ですが、今回の目的は以前行った時に気になった遊歩道沿いにある大きな岩で「忠治の隠れ岩」という名前がついています。
若い人は忠治と聞いてもピンとこないかもしれませんが、知ってる人からすれば「忠治がどうしてここに?」となると思います。
忠治とは「赤城の山も今宵限り…」というセリフが有名な江戸時代の侠客で現在の群馬県伊勢崎市国定町出身の国定忠治・本名長岡忠次郎(以後忠治)の事です。忠治は豪農の家に生まれましたが父親が亡くなった後、家督は弟が継ぎ本人は博徒となって上州から信州一帯を実質支配していました。天保の大飢饉では窮乏した農民を救済した侠客として講談や浪曲、映画にもなっています。
さて、その忠治の隠れたという岩がなぜ、湯ノ丸の「池の平湿原」にあるのか?という事になりますが、
忠治は侠客なので「切った張ったの世界」、罪も犯しています。忠治は役人から逃げる場所として、また仲間や愛妾(真実は不明)のいる場所として信州の須坂市には何度か来ていてルートとしては次の3つの説があります。
一つ目は高崎から嬬恋村の大笹宿へ出て鳥居峠経由で菅平高原を超え須坂に出る大笹街道です。大笹街道は中山道から碓氷峠を超えて北国街道を通るルートより1日早く行けるので一般にも良く使われたようです。
二つ目は大笹街道よりは人目に付かない草津道を利用したルートで渋峠を越えて中野市経由で行く道で途中の志賀高原にも「忠治の隠れ岩」があります。
三つ目は先の二つのルートより更に目立たないルートで浅間山麓のけも道を利用し鬼押し出しから六里ヶ原を横断して車坂峠に入って小諸に下りるというものです。
車坂峠をそのまま小諸市に下りず4kmほど横に移動すれば「池の平湿原」に行けるので、
三つ目の説からすれば隠れ岩が「池の平湿原」にあってもまんざらおかしくも無い気がします。(現在は湯ノ丸高峰林道が整備されています)
「池の平湿原」の駐車場は湯ノ丸高原地蔵峠駐車場から車で10分程度の所にあります。
駐車料金は普通車で600円、今日は紅葉の時期にはまだ早い事もあって車の数は少ないです。麓の気温は19℃でしたが駐車場は9℃、紅葉がピークの10月下旬頃は冬支度が必要になりそうです。
緩やかな坂道を湿原に向かって降りていきます。以前は地面を歩きましたが今は段差のない木道になっていてとても歩きやすく10分程度で湿原に到着しました。
さすがに高山植物の花は見かけませんが空が真っ青でとても気持ちが良い初秋の景色です。
遊歩道にはほとんど人が居ませんが、おそらく湿原から山道を登り三方ヶ峰や見晴岳に登っているかと思います。
更に10分程歩くと「忠治の隠れ岩」に到着しました。
残念ながら遊歩道から降りることができないので岩の近くまでは行けませんがいくつかの岩が重なっていて空洞の様になっています。なるほどこの空洞になら身を隠せるかもと思いましたが「食料の問題もあるのでいつまでも居られるわけがないな」などと現実的なことを考えていました。
「池の平湿原」は三方ヶ峰火山の火口原で1周が2km程度、隠れ岩の近くには鏡池という小さな池もあります。また遊歩道の途中には湿原の一部が崩れ落ちた開放口という場所があり、佐久盆地一帯と八ヶ岳が見えました。
湿原には「忠治の隠れ岩広場」と「グリーン広場」という2か所の休憩場所があり、それぞれにお弁当を広げているハイカーが居ました。この日は天気も良いし静かなのでのんびり秋の湿原を楽しむには絶好の日でした。三方ヶ峰や見晴岳へ登ればアルプスの大パノラマが見えるはずですが、それは次の機会にして駐車場に戻ることにしました。
帰りがけに地蔵峠駐車場にあるビジターセンターを訪ねスタッフの方に「忠治の隠れ岩」について聞いてみましたが詳しい事はわからないとの事でした。
インターネットでも経緯については分かりませんでしたが、興味深い記事が見つかりました。
壇 一雄の小説で1961年初版「新説 国定忠治」中には忠治一行は早春に浅間の裏を回り三方山に出る途中に雪崩にあい洞窟のような岩に逃げ込んだ。その後暫く住みついて時々麓まで下りていたという一節があるというものです。岩の名前が付けられたのが先なのか小説書かれたのが先なのかはわかりませんが、手に入れば読んでみたいものです。
忠治は信州へ続く「大戸の関所」を破った罪で捕まり最後はこの関所で処刑されましたがその後関所の近くに忠治の慰霊碑が建てられました。義賊としての一面もあった忠治は民衆からは英雄のような存在だったかもしれません。
さて、前述の壇 一雄の「新説 国定忠治」の中で忠治が春先から隠れ岩で過ごすようになったという話、これは小説の中での事ですがもし本当にこの隠れ岩で過ごしていたらどうでしょう。「池の平湿原」は雪が解けた初夏からは高山植物の花々、盛夏は涼しく、秋は紅葉と景色を楽しむには絶好の場所。追われる身の忠治もこの隠れ岩に居る時だけはホッとしたのかもしれません。
「池の平湿原」を1周する遊歩道は段差のない木道なのでスニーカーでも無理なく歩くことができます。また、所要時間も休みながら歩いても1時間半程度なので気軽なトレッキングコースとしてお勧めです。
*訪問日 2026年10月7日