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外国人宣教師から受け継がれる避暑地と食文化 野尻湖とルバーブ

掲載日/2013年7月
ルバーブ

 ルバーブという野菜が最近一部のスーパーにも出るようになって、「あれは、どうやって食べるの?」と聞かれ、数年前に読んだ、1973年頃の野尻湖周辺を舞台に書かれた大田愛人著「辺境の食卓」という本にルバーブのジャムの話があった事を思い出しました。

 宣教師として野尻湖がある信濃町に赴任した時の風土や食文化、また外国人宣教師や避暑地についてのエッセイです。辺境と言うのは些か語弊を招きそうですがそれだけ自然の食材が豊かだったのでしょう。野尻湖が外国人の避暑地になったのは、大正時代で、宣教師のダニエル・ノルマンが有名になり過ぎた軽井沢を離れ、故郷カナダに似た山と森に囲まれた野尻湖の存在を知り湖の南西一帯を外国人の為の避暑の場として別荘を拓いたのが始まりと言われ、現在の国際村に至っています。1921年には野尻湖協会が設立、厳正な協会制度のもとで、共同で村の運営・管理が行われています。

直売所「ぶんぶく亭」

 若干の下調べをして、先ず信濃町のルバーブ畑を訪ねることにしました。信濃町IC近くの道の駅「しなの」の観光案内所で畑に隣接した直売所「ぶんぶく亭」を教えて頂きました。不定休のようですが当日は職員さんが居て、畑を案内して頂きました。ルバーブは7月と9月に収獲できるそうで今は最盛期です。見かけは蕗に似ていますが茎が太く赤いのが特徴で、繊維質が豊富でビタミンCやカルシウムも多く、肉食中心の外国人にとっては古くから食卓の必需品だったようで、この地にルバーブを持ち込んだのも避暑を求めた外国人宣教師でした。「ちょっとすっぱいけど」と出された冷えたジュースは暑い季節にはとても合うさわやかな味で、目当てのジャムの他にジュースも買いました。

野尻湖

 「ぶんぶく亭」から森を抜けると野尻湖国際村に出ます。湖畔の道路は車一台分程度の広さで道路脇には静かに波が寄せていました。湖面にはヨット、遠くには妙高山、湖からの斜面の森には別荘が点在し、遊覧船や貸出ボートなど観光客で賑わう中心地点とはまったく違う、いかにも避暑地らしい風景で、軽井沢の次に選ばれた事がよくわかります。国際村は私有地ですので特に夏季はむやみに散策はできませんが、その他の場所ならのんびり一周してみるのもいいですね。

湖からの斜面の森には別荘が点在

 本格的な避暑のシーズンを前に協会の皆さんなのでしょうか、国際村の道路整備をしていました。今も大切に守られているようです。信州から新潟の海へ行く国道18号線での休憩地点として立ち寄られた野尻湖も高速道路の普及でかつて程の賑わいもないように感じられますが、のんびり避暑を過ごす外国人にとってそれはそれで良いことで、この辺一帯に世界遺産の話は出なくてほっとしている人も居るかもしれません。

 久々に開いた「辺境の食卓」のあとがきに「本来、自然愛好民族である日本人が、驚くほど自然に対して無知になってきていることも日ごとに痛感しております」という一説が、1976年 晩夏 信州 柏原にて、として書かれていました。