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「蚕都」の重要文化財 笠原工業常田館製絲場

掲載日/2013年11月
笠原工業常田館製絲場

 長野新幹線なら東京方面から上田駅に入る直ぐ右側に歴史のありそうな4階建ての白い倉庫、以前から気になっていたので調べてみるとかつて製糸業が盛んだった頃の繭倉庫で現在は国指定の重要文化財に指定されていました。製糸場といえば世界遺産登録へ向けて活動している富岡製糸場が注目を集めていて、観光客で賑わっています。重要文化財ながらそれほどPRしているとは思えないこの倉庫、受付をすれば内部の見学もできるという事から早速訪ねてみました。

 長野県での製糸業は「あゝ野麦峠」にも出てくる諏訪、岡谷市が有名ですが、上田市も「蚕都」とうたわれるほど製糸業が盛んだった地域です。繭倉庫があるのは当時上田市で一番の製糸場を誇っていた笠原工業常田館製絲場で昭和59年には製糸業は休止、他の産業へと分野を広げています。

趣のある建物内

現在の場所は3棟の繭倉庫と選繭場、洋風建築住居「常田館」が国指定の重要文化財として管理、公開されています。事務所で来館者名簿に名前を書くと、見学許可証を渡され首から掛けると社員さんが順路の入り口まで案内してくれました。ちなみに見学は無料です。
旧工場は取り壊されて更地になっていますが受付のある事務所、倉庫、炊事場、風呂場煙突などは古いまま管理されていて往時を偲ぶことができます。かつては敷地内に病室や劇場もあったそうです。

 新幹線からは一部しか見えなかった繭倉庫ですが、実際には3階建て、5階建ての立派な倉庫郡がありびっくりしました。3棟の繭倉庫は明治36年から明治45年に建築されたもの。

繭倉庫

 「随分立派な倉庫ですね」と聞くと、繰糸行程(繭から糸を紡ぐ)は年中作業、繭の保管状態が品質に左右するので倉庫の建築には最新の技術と工夫が施されたということです。また、富岡製糸場の繰糸器はフランス式だった事の対し、ここでは諏訪式と呼ばれていました。笠原工業常田館製絲場は明治11年、諏訪郡平野村(現在の岡谷市)で製糸業を始めますが、明治33年に上田市へ工場を移転しました。イタリアの繰糸技術と日本の技術のいいとこ取りをして諏訪式を開発したそうです。一通り説明と注意事項を聞いてあとはフリーで見学です。

 国内最高層の木造5階建ての倉庫、軋む階段や床、また当時の運搬用のエレベータがそのまま残り歴史を感じさせます。倉庫を後にして洋館風の事務所として建築された常田館に向かいます。ここは1階は館主宅で2階は打合せ、慰労会、結婚式など多目的に使われました。明治41年の建築で内部はほとんど和室です。

見学した地元小学校の生徒からのお礼のメッセージが貼られている

各部屋に趣があり、りっぱな松のある中庭、さすがに館主宅です。中庭には蔵があってここも資料館になっています。綺麗に展示されていてミニ博物館のようです。感心しながら事務所にもどって、それぞれ重要文化財で貴重な施設なのに、全くフリーの見学かつ無料。「随分オープンですね~」と聞くとちょっと笑って「今後検討します」と一言。館主宅の2階の壁に地元小学校の生徒ひとりひとりの見学したお礼のメッセージが貼ってあったのが印象的でした。JR上田駅のお城口出口からは徒歩でも10分程度です。信州製糸業の歴史にふれてみてはいかがですか。
土日、祝日は会社がお休みですので内部見学は事前連絡で平日がお勧めです。