戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」全室源泉100%の温泉宿戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」全室源泉100%の温泉宿

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北信濃 唱歌の里、野沢菜の里

掲載日/2014年6月
千曲川周辺に広がる黄色の絨毯

  信州の漬物といえば野沢菜漬けが代表ですが、野沢菜の発祥は1765年、野沢温泉村の曹洞宗健命寺の第八世晃天園瑞大和尚が京都遊学の折、持ち帰った天王寺蕪の種子を蒔いたところ、野沢特有の風土から変種し現在に至ったと言われています。この地方の菜の花は菜種油用のアブラナではなく、9月に種を蒔いた野沢菜を収穫せずに春まで残し、伸びた茎から花を咲かせたものです。唱歌「朧月夜」を作詞した高野辰之出身の旧豊田村周辺、特に飯山市では鑑賞用に菜の花の栽培が盛んで5月の連休には菜の花祭りが開催され、千曲川周辺に黄色の絨毯が広がります。

 連休も終わり観光地は一休み、花の見頃は過ぎてものんびり行けるかなと思い、野沢菜発祥のお寺を訪ねる事にしました。

野沢温泉

長野市からも随分遠いイメージがあった野沢温泉も上信越自動車道豊田・飯山ICからは僅かに25㎞、飯山市内を通り野沢温泉手前にある北竜湖に立ち寄ることにしました。飯山市では新幹線飯山駅が来年の開業前に見学会が開かれていました。街中は案外静かでしたが新幹線駅ができると随分変わるのでしょうか?
千曲川沿いの国道117号線に出ると川沿いにはまだまだ黄色の菜の花絨毯が残っていました。大関橋を渡り、山道を走ると北竜湖が見えてきました。周囲2.2㎞、小さな湖ですが山の新緑が水面に映り、駐車場近くには菜の花畑、静かでとても良い景色です。ここは穴場かなと思いながら観光ガイドを見ると撮影スポットとして写真家には知られているようでした。何枚か写真を撮って山を下り、野沢温泉に入りました。30年前にスキーで来た時以来で温泉街の中はさっぱりわかりません。くねくねした狭い道路にナビもお手上げ、健命寺は地元の人に聞くことにして、とりあえず宿に入り、早速、名物の外湯に向かいました。

健命寺

 野沢温泉の外湯は全部で13か所、熱くて入れなかった思い出がありますが、今回入った熊の手洗湯は湯船が二つ、一つは笹屋ホテルと同じ温度、弱アルカリ性の柔らかい泉質でゆっくり浸かることができました。
翌朝、女将さんから温泉街の地図をもらい、健命寺を教えて頂きました。宿からは歩いて10分程度の距離で、温泉街を散策しながら行くことにしました。野沢菜漬けのシーズンには、テレビでも時々紹介される街中の観光スポットの麻湯を見学し、狭い坂道をあがって健命寺に到着しました。宿のチェックアクト時間前の為か人影はなくひっそりしています。寺の裏手には菜の花畑が広がりちょうど見頃、案内板を見れば野沢菜の原種から育てられた菜の花とのことでグッドタイミングでした。原種の種子は「てら種子」としてお寺で販売されていました。

野沢菜原種の看板

宿に戻って、静かな街の様子を話すと、スキーは連休まで、今は一段落との事でした。以前スキーに来た時に食べた野沢菜の油炒めが美味しかったと話をすると、胡椒のほかにニンニクを少し入れるだけで断然美味しくなると教えてくれました。地元ならではのコツがあるようです。

女将さんに見送られて宿を出ました。温泉街を離れる道路脇には菜の花畑、奥の山頂には残雪、北信濃らしい初夏ののんびりした風景です。晩年を、野沢温泉麻湯の近くの別荘で過ごした高野辰之、「朧月夜」「故郷」「春の小川」など数々の唱歌は、この北信濃の風景が原点なのでしょう。

 野沢温泉内の道路は狭く、車も停め辛いので温泉街入口にある野沢温泉観光協会中尾案内所に立ち寄って詳細地図を先にもらうことをお勧めします。