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シルク紀行 諏訪市「片倉館」

掲載日/2014年11月
片倉工業(株)

 富岡製糸場が世界遺産になってたくさんの見学客が訪れていますが、この140年以上前の建築物の保存管理に大きな役割を果たしたのが、長野県岡谷市で創業した片倉工業(株)です。1872(明治5年)官営の製糸工場としてスタートした富岡製糸場は1893年(明治35年)に民間企業(三井家)に払い下げられ、その後1939年に片倉工業(株)に合併、1987年まで操業を続けました。操業中止後も片倉工業(株)は「売らない、貸さない、壊さない」の3原則をもとに管理維持し2005年に富岡市に寄贈、建物は2014年6月に世界遺産に登録されました。

さて、世界遺産誕生へ大きな貢献をした片倉工業(株)ですが、製糸業での繁栄ぶりを思わせる当時の建物が諏訪市にあります。現在も一般に利用されている文化福祉施設の片倉館で、国の重要文化財に指定されています。今回はその片倉館を訪ねてみることにしました。

 場所は長野自動車道岡谷ICから15分程度、諏訪湖の畔にある洋風の建物です。
13時30分、集合場所で待っているとガイドさんが来て見学会が始まりました。建物は温泉棟と貸室、広間のある会館棟に分かれています。温泉棟は日帰りのお客様が利用しているので、見学は貸広間、資料室がある会館棟になります。2階の資料室には当時の写真があり、特に基礎工事の写真には驚かされます。片倉館の建つ土地は元々諏訪湖であった為、地盤がゆるい事から何千という杭を打ちました。建物の材料にも最良のものを使っていたことから現在の金額で数十億円掛かったそうです。
建築したのはシルクエンペラーと呼ばれた二代目片倉兼太郎で、欧州視察旅行の際、現地の温泉保養施設に感銘し、地元の人たちの文化向上の為として資金を集め昭和3年に建築しました。

天井には当時のシャンデリアが

 資料室の次は舞台付の大広間へ行きます。外観は洋風建築ですが中は畳敷きの和室です。窓は障子ではなくガラスの二重窓で全くの洋風作り、天井は2段に仕切られ当時のシャンデリアも残っていました。外観は洋風でも日本人に使いやすい和魂洋才の建築思想です。1階には15畳位の和室も数部屋あり、大広間と同様に現在も貸室として利用されています。

見学会では温泉棟には入れませんが、別名「千人風呂」の説明もして頂きました。
千人風呂は深さ110㎝と深い為、立って入ります。ゆっくり腰を落とすことはできないので一度にたくさん入れる事から、いつしか千人風呂と呼ばれたそうですが本来の目的は違うようです。

二代目片倉兼太郎が感銘した欧州のお風呂は歩行浴の為のお風呂でした。事実、千人風呂の底には玉砂利が敷いてあります。
また、ゆったりとした空間を楽しむ為の広さで、けっして一度にたくさん入れる為ではなかったそうでカランも少なく、正式名は「大浴室」です。
ガイドさんも「本来の思想から言うと、千人風呂とは…」と苦笑いでした。

見学時間は45分程度、日本の製糸業、片倉工業㈱の歴史や片倉館の施設の細部まで説明頂き、感銘を受けました。
次回はゆっくりと空間を楽しめる「大浴室」を楽しみたいと思いました。