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ちょっと冒険 標高2000m 6月上旬の栂池自然園

掲載日/2015年6月

 今回は、北アルプスを間近に望む、今シーズン開園間もない栂池自然園のレポートです。
麓の栂池高原駅に車を留め、まず6人乗りのゴンドラに20分ほど乗り、一旦降りて、栂大門駅から71人乗りの栂池ロープウェイで自然園駅を目指します。

栂池自然園の看板

 眼下には一面緑のゲレンデ、梅雨の合間の青空に残雪のアルプスが近づき、「今日は当たりだ!」と内心ワクワクです。
他には年配のご夫婦が2組ほどしか乗って居ませんでしたが、トレッキング用の装備は万全です。こちらと言えば、「まあ、初夏の湿原を写真でも撮りながら木道をちょっと散策…」といった気分だったので、長袖のシャツにジーンズ、夏用のトレッキングシューズまがいの靴を履き、ペットボトル、カメラ、万が一の為の雨具を入れたザック程度の軽装でした。
ロープウェイに乗るとスタッフの方の案内が始まり、自然園の現在の状況説明に少々不安になってまいりました。
本日は晴天でアルプスも良く見えるけれど、時期が早いので木道は全て雪の中、湿原中央付近にある休憩所も雪に埋もれているとのことです。

浮島湿原に向かって雪道を歩く

 まあ、なんとかなるだろうと、蕗の薹も顔を出し始めた道をビジターセンターに向かいます。ビジターセンターで地図をもらい状況を聞くと、木道、湿原は雪に埋もれているので、ピンクのテープを付けた竹の棒を目印に前に進んでくださいとのこと。
同じ信州の6月でもここは北アルプスを間近に望む標高2000m、連日30℃近くなっている里とは違うんだよと言わんばかりです。
頂いた地図から自然園中央より少し先の浮島湿原なら往復で2時間位の行程と聞き、その位ならと雪上行軍を始めました。みぞれの様になった雪に「この靴では…」と思いながらトボトボと歩き始め、暫くして振り返ると誰もいません。どうやら他の皆さんは断念しているようです。

ハイキングのような格好で一人こんな場面を歩いているのはとても妙な感じです。それでも近づく残雪のアルプスと雪に埋もれた湿原の風景に、この時期ならではと自分に言い訳をしながら歩き、なんとか浮島湿原らしき場所に到着しました。

浮島湿原に咲くリュウキンカ

僅かな広さですが雪解けの水辺に水芭蕉の他、何種類かの花が咲いていました。一部顔を出している木道では一人の女性が花の写真を撮っていました。高山植物の専門家なのか、かなり詳しいようで、それぞれの花の名前を教えて頂きました。しかし、疲れて朦朧とした頭に残った名前はリュウキンカだけでした。
「私はここで戻ります」と言うと女性は「私はこの先も行きます」と言って上りの雪面をさっさと歩いて行きました。

雪の上に立つ道案内のピンクのテープ

 こっちはなにせ素人だから暫く休んだら戻ろう、と地図を見れば、この先には≪標高2020m自然園内最高地点の絶景!≫と書かれた展望台があります。もはや参考にならない地図でも、大体30~40分程度だろうと勝手に判断して、行ってみることにしました。

 雪の壁を横に見ながら、ピンクのテープを頼りに上り斜面を上がっていきます。展望台看板が見えて来るとそこからは階段になっていて雪もありませんでした。

残雪の杓子岳

ようやく展望台に到着すると、いきなり飛び込んで来るのは残雪の杓子岳2812m !! と白馬大雪渓です。
「うわ!これは…」と思わず声がでました。浮島湿原から先に行った女性が居て、「これが雪道を歩いたご褒美なんです」と言ってくれました。
彼女はその先の展望湿原を目指しているようでしたが、私はここで何枚か写真を撮り、一休みして引き返すことにしました。

 展望台からはビジターセンターが雪原の遥か遠くに見えます。「帰りは下りの雪面なので要注意」と彼女の言う通り慎重に下って行きます。雪の照り返しで顔が日焼けしていき、靴の中はビショビショで冷たくなり始めました。

 暫く降りると年配のご夫婦が上がってきました。「展望台はあとどのくらいですか?」「大雪渓は見えましたか?」と聞かれ、「30分程度、大雪渓も見えますよ。」と先達のような気分で答えていました。 雪原歩行往復3時間、何とかビジターセンターに戻ってきました。少々冒険でしたが、雪原を苦労して歩いて絶景のアルプスを見ることができた事に達成感が湧いてきます。
素人ながら山を愛する人達の心情を一口噛んだ様な気分、絞った靴下からは栂池がこぼれ落ちていました。

 

 栂池自然園の木道がすべて歩けるようになるのは7月中旬頃とのことです。
開園直後のオフシーズンはもちろん、シーズンのピークでも天気は刻々と変わります。装備は万全でお出かけください。麓の栂池高原駅のショップではトレッキング用品一式のレンタルもありますので、用意がなければこちらを利用するのもいいですね。