戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」全室源泉100%の温泉宿戸倉上山田温泉「笹屋ホテル」全室源泉100%の温泉宿

るぽ信州るぽ信州

静かに光る 坂城町「鉄の展示館」

掲載日/2024年4月上旬

 当館のある千曲市のお隣の坂城町には「鉄の展示館」という博物館があります。
鉄と言っても具体的には何だろうと思われるかもしれませんが、実は日本刀がメインの珍しい博物館です。坂城町は刀匠で人間国宝となった故宮入行平氏の生誕地で、日本刀造りは現在も息子さんの宮入小左衛門行平氏をはじめ一門によってこの地に受け継がれています。
「鉄の展示館」は、鉄の加工技術が町の工業の発展に貢献したことから、日本刀の他にも地元企業の工業製品の展示も含めて2002年に開設されました。

鉄の展示館

「鉄の展示館」は当館から車で10分程度、しなの鉄道坂城駅からは徒歩3分程度のところにあります。当地出身で人間国宝の故宮入行平氏の刀が展示されているとは聞いていましたが、ロビーにはたくさんの吊るし雛があってちょっとびっくり。
理由を聞くと、近くにある「坂木宿ふるさと歴史館」の雛祭りの企画に合わせているとの事で、最初に入った第一展示室はフロアーからショーケースの中まで雛人形でいっぱいでした。

雛人形

刀はショーケースに2本短刀があるのみで、そのうちの1本は高倉 健さん旧蔵 小田貴氏寄贈とあって、あの俳優の?とちょっと不思議な感じがしました。
展示されているのが雛人形ばかりだったので受付に戻り、「刀はどこですか?」と聞くと同じ1階の宮入行平記念室に案内されました。

宮入行平氏

 宮入行平記念室には宮入行平氏の遺品や作品が展示されています。個別のショーケースに収められた日本刀は眩い光を放っていて、こちらは最初の雛飾りの部屋とは打って変わった緊張感が漂う展示室になっています。
戦国武将の甲冑などと一緒に展示されている他の博物館の刀のイメージとは全く違い、美術品という印象を強く感じます。

日本刀

 第二展示室は2階にあります。階段には日本刀の出来るまでの工程や各部の名称、特長が説明されたパネルが展示されていました。第二展示室は宮入一門の作品の他、全国から寄贈、寄託された古刀や新刀が展示されています。

館内の様子

第一展示室とはまた違ったデザインのショーケースで刀の数の多さとその光に圧倒されました。
日本刀の魅力が解るためにはある程度の基礎知識が必要とは思いますが、素人なりに日本刀に美術品という印象を持つことができたのは展示室の設計や照明などの特別な技術もあるのかもしれません。

施設の前にはお休み処があって飲み物やお土産を販売していました。中に入って「あれ?」と思ったのは高倉 健さんの古い映画のポスターでした。
雛飾りのショーケースの中にもご本人所蔵だった短刀もあったので理由を聞くと、 日本刀が好きだった高倉 健さんと宮入行平氏の息子さんの宮入小左衛門行平さんとは長い間交流があって、高倉 健さんにも日本刀を作ったとの事でした。高倉 健さんが亡くなってから所蔵していた8点の刀剣類などが展示館に寄贈され、その後2度特別展が開催されたそうです。
学芸員さんの話では次の特別展は今のところ予定はないが、今回の雛祭りの様に企画展があればその企画に合うような刀を1点は出すようにしたいとの事でした。 日本映画のスターとこの町の意外な縁になんとも驚きでした。

坂城町は北国街道の宿場町として江戸時代は60件以上の旅籠で賑わったという歴史はありますが、今の駅周辺は随分静かになりました。
雛祭りの時期とは言え今日は雪交じりの寒い日になりましたが次々にお客さんが来ています。
「盛況ですね」と受付の方に言えば、今日は連休だからお客さんが多く、普段は静かとの事でした。

 観光面に特化した町では無いですが、日本刀を美術品として鑑賞できるほどその魅力を生かせる博物館があるのは刀匠の町ならではの事で、 静かになっても光るものはちゃんと持っているのだなと思いました。

坂木宿ふるさと歴史館

 「鉄の展示館」の入場料は400円で、近くにある「坂木宿ふるさと歴史館」も併せて見学できます。こちらは坂城町の歴史と当地出身の戦国武将、村上義清ほか村上氏の資料が展示されています。建物は昭和4年に建造された木造3階建の和風建築で建築に興味のある方にもおすすめです。