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春を掘る ―長野市松代の長いも―

掲載日/2025年4月上旬

 長いもで有名な長野市松代では春に植えた長いもを秋と翌年の春の2回に分けて収穫します。
10月下旬から12月中旬の収穫を「秋掘り」2月中旬から4月中旬の収穫を「春掘り」と呼んでいます。「るぽ信州」では以前12月に長いも掘りをレポートしたことがありますが、今回は「春掘り」をレポートすることにしました。
*2013年12月のるぽ信州( 味わいは深く 信州松代の長芋


長いも

昭和40年頃、松代産の長いもは全国の生産量の6割を占めるほどでした。
しかし、その後生産量は減っていき最近では1位北海道、2位青森県、3位が長野県で、2位の青森県との差は随分大きいです。
長野県内では長野市松代と松本市に近い山形村が長いもの2大産地ですが、味の違いもあるようで松代産は山形村産より水分が多くサラッとしていると言われています。これは土壌の違いで、山形村の土壌が上高地にある焼岳の噴火で運ばれてきた火山灰が堆積した土壌に対して、松代産は千曲川が運んできた砂地であることが要因のようです。

また、「秋掘り」と「春掘り」では味の違いもあり「秋掘り」は新物らしく皮が薄くてみずみずしく、「春掘り」は冬の間土の下で寝かせることで自らのデンプンを糖に変えるため甘味が増すと言われています。そんな予備知識を持って2月の下旬に畑を訪ねてみたのですが、芋掘り用のバックホーが数台出ていますが掘っている様子がありません。近くの直売所で訊いてみると長いもは凍みに弱いのでこの冷え込みでは掘り出せないとの事。収穫した後であまり凍みるようであれば毛布をかけることもあるそうで、3月中旬なら見学できると言われました。

春の陽気で賑やかになった長いも畑

さて、3月に入ってようやく暖かくなった頃、再び松代を訪ねてみるとこの陽気を待っていたかのように長いも畑は随分賑やかになっていました。 規模が大きい畑は大勢で忙しそうなので、ご夫婦二人でゆっくり長いも掘りをしているところへお邪魔してお話を聞かせていただきました。

「春掘り」の風景

「我が家は家庭菜園程度の量だから見学なら専業農家の方がいいんじゃないの」とご主人は笑いながらバックホーで畑を掘り、奥さんは掘られた土の中から丁寧に長いもを取り出していました。
バックホーのアームは奥さんの頭の近くで動いているので「けっこう近いですね」というと「信じているから」と奥さんは笑っていました。

今日は晴天なので真白なアルプスが良く見えます。「あれが鹿島槍、こっちが高妻山、飯縄山」と山の名前も呼ぶご主人も今日の「春掘り」を楽しんでいるようでした。ご夫婦の親戚が笹屋ホテルのグループ会社に勤めてるという話からいつの間にか別の話題が大半になってしまいましたが、これもご縁かなと思いました。

とろろ祭り

見学させていただいたお礼を言って2月に訪ねた直売所に行ってみました。
「今日は一斉に掘っていますね」というと、5月には種芋を植えないといけないし、種芋作りも大変だからあまりのんびりしていられないのだそうです。昔は手掘りで大変だったが今は機械があるから随分楽になった、それでも皆年寄りばかりで若い人が少ないと話していました。

とろろ蕎麦

「春掘り」の長いもは甘いという話もあるし、せっかく松代に来たのでお蕎麦屋さんへ行ってとろろ蕎麦を食べることにしました。
「秋掘り」と「春掘り」の違いは判りませんが摺りたての長いもは真っ白でフワッとしていて爽やかな甘さがあります。「やっぱり春掘りの甘さか…」と直売所で1本買って帰ることにしました。

長いもは糖質の代謝に必要なビタミンB1が豊富、また腸内環境を整える食物繊維や疲労物質を代謝するアミノ酸のアルギニンも多いなど優れもの野菜です。
春の行楽で近くにお越しの際は「春掘り」の長いもを味わってみてはいかがでしょうか。