

しなの鉄道の小諸駅前が随分変わったという話を聞いていたので近くを通ったついでにに寄ってみることにしました。
桜や紅葉で有名な小諸城址・懐古園へは何度か行っていますがいつも隣接の駐車場へ直行しているので駅前へ行くのは随分久しぶりです。
商業施設が立ち並ぶ一般的な駅前の風景と記憶していましたが、駅出口の北側には洋風の庭園がありその先も広場になっていたので少し歩いてみることにしました。
洋風庭園入口には「停車場ガーデン」という案内がありその先にはおしゃれなカフェ、更に進むと広場があり古い建物を利用したレストランもありました。駅前なのにこんなに自由な空間が広がっている景色は初めてなので新鮮と言うか不思議な感じさえしました。
道路の先に石垣が組まれた立派な門がありましたが、この日は時間がなかったので立ち寄らず一旦帰って下調べをしてから再度訪ねる事にしました。
「こもろ観光局」のHPにある小諸駅周辺マップを見ると、大きな門は小諸城の大手門で元の三の丸は大手門公園となっていました。
小諸城の本丸は確か駅を挟んで反対側の懐古園内なので、これは線路が城郭を突っ切っているという事になります。小諸城址=懐古園とばかり思っていたのでびっくり、どんな経緯なのかさらに調べてみました。
明治時代になり多くの城が廃城となっていく中で、小諸城については明治13年旧小諸藩士らが三の門から本丸址までを払下げを受けて取得。その後旧小諸町が史跡の自然景観を活用した公園として整備を行い、現在の小諸城址・懐古園になりました。
小諸駅は明治21年に官設鉄道(旧国鉄)として開業していますが、駅舎を現在に場所にした事や線路を城郭内に通した理由について確かなことはわかりませんでした。ただ、小諸の町は市街地から千曲川迄の高低差が100mもある坂の町と言われているので線路を敷ける平らな場所が現在の場所しかなかったからという記事がありました。
他に場所が無かったからとは言え城郭を横断するのはどうかと思いましたが、明治6年の廃城令により城が壊されたり売られたりした時代なので文明の象徴のような鉄道建設が優先されたのは当然かもしれません。他の例では上田城も二の丸橋の下を電車が通っていた時代があります。
*2013年4月のるぽ信州( 地域を結んでいた城下町の鉄道路線 上田城二の丸橋より )
では、最近の小諸駅周辺の開発はどうだったのでしょうか。
小諸駅は信越線と小海線が接続し特急も停車する重要な駅でしたが、長野新幹線開業の際には新幹線停車駅にはならず特急列車もなくなったことから、駅の利用者も減って商店街の店舗も次々に閉店してきました。
町に活気を取り戻す為、2019年に市の職員と市内で事業を営む人たちが「こもろおしゃれプロジェクト」を立ち上げ、小諸市に移住して開業したい人と空き店舗をマッチングさせておしゃれな店がたくさんある街作りを目指しました。
6年間で30軒以上の空き店舗がおしゃれな店になったとあります。
大手門については、1991年に個人所有であったものが小諸市に寄贈されたのを機に大手門公園として整備、大手門は2004年から2007年にかけて保存補修工事を行っています。駅から大手門前までの整備は2009年から始まり2021年に完了し現在に至ります。
駅前の開発は随分前から始まっていたことになりますが、今まで知らなかったのはそれだけ小諸駅前には行ってなかったのかと実感しました。
概略が分ったところで再び小諸の街を散策することにしました。
駅の南側にある2時間無料の市営の駐車場を使い、周辺マップを持って前回同様に改札口の北側にある庭園を歩きました。
最初にある建物はおしゃれなカフェは「停車場ガーデン」で、その先は小川が流れる「せせらぎの丘」、「浅間山麓野草園」、「まちたね広場」へと続きます。古い建物のレストランは小諸宿本陣を移植復元した「本陣母屋」というイタリアンのお店でした。
前回遠目で見ただけの大手門は2階が資料室になっていて、4月から11月までの特定日に開館し無料で見学ができます。この日はちょうど開館日だったので早速2階に上がりました。
小諸城に関係する資料が展示されている資料室は大きな窓から駅方向の景色がとても良く見えて、外観からは想像できないほど開放的な空間です。ガイドさんが待機していたので、城郭に線路が敷かれた経緯を聞いてみましたがその辺の事情はわからないとの事でした。
上田駅は上田城址公園まで歩くにはけっこう大変ですが小諸駅は城郭内にできたような駅なので列車の人が観光するには都合がいいですねと言うと、あまり考えたことがなかったけどこれからはその点もアピールするとの事でした。
見学の方が何組か入ってきたので退室して旧北国街道沿いの本町通りに出てみました。
城下町から宿場町、商業地として賑わった通りには古い建物が立ち並び、リノベーションされて飲食店になっている建物もあります。
旧北国街道は本町から新町、与良町と続いていて与良町には俳人、高浜虚子が疎開していた時に過ごした家など見どころも多そうですが今回は本町を歩いたところで駅に戻りました。
歩いた距離は2km弱、小諸駅からは隣接した懐古園散策はもちろんですが初めての街歩きも容易に楽しむことができました。そこには駅前から庭園、広場、大手門、本町通りへと散策意欲を高める上手な導線作りがあるように思われます。
改めて感じたのは、駅が城郭に接しているという恵まれた環境下にあるという事でした。
―小諸駅からもぶらっと歩ける歴史体感エリアで小諸の歴史をお楽しみくださいー
「こもろ観光局」のHP内にあるこのようなPR文も納得です。
観光スポットまで随分歩いたり乗り物を利用しないと行けない駅はたくさんありますが、小諸駅は駅前からすぐに観光スポット。なんだか改札口はその大手門のようですね。
小諸駅の中にはセルフサービスの地元野菜の直売所があってお金を箱に入れて買って帰ることができます。この日は地元のキャベツ、レタスが各100円、横にはレジ袋も用意してありました。新鮮な野菜が安価なら地元の人も立ち寄っていきそうです。
駅の賑いは街の賑い、これも戦略なのかなと思いつつレタスを買って帰りました。