

千曲市では3月に2度、春の妖精に出会う事ができます。
春の妖精とは上旬が見ごろのセツブンソウ、もう一つは下旬が見ごろのカタクリの事、今回はそれぞれの妖精に会いに行った時の様子をお伝えします。
セツブンソウの群生地は「しなの鉄道・戸倉駅」の東側にある山の中腹で、桜の名所「戸倉宿サクラケアパーク」の駐車場から20分程山道を歩いたところにあります。群生地に来たのは今回で2回目。約20年前に来た時は期待したほど花が無くてがっかりした記憶がありますが、この日は朝10時の時点ですでに駐車場が満車に近いので期待できそうです。
セツブンソウの群生地を訪れたのは3月6日。
3月上旬の山道はお天気とは言えけっこう寒い上に雪解けで部分的にぬかっていました。
千曲市の広報では8分咲きとの事でしたが、この気温で見頃になるのは不思議に思えましたがそこがセツブンソウの所以のようです。
つづら折りの坂道を15分程歩くと群生地が見えてきました。花は白くて小さいので遠目では良くわからなかったのですが、近寄ってみると斜面はセツブンソウ一色というほどたくさんの花に覆われていました。
「いつの間にこんなに」と隣の人がつぶやいていましたが、全く同感で前回とは別の場所に来たかのようです。何千株なのか何万株なのか分かりませんがこれだけ増えるのは地質が合っているからだろうという人もいました。
群生地は急斜面になっていますが周りに手すりを付けた階段があるので1周することができます。花は満開ではないですがカメラを通してアップで見ると繊細で色彩も豊か、気品さえ感じられます。高性能のカメラで接写すると良い写真が撮れると思いますが残念ながらこちらはスマホ、それでもそこは妖精、笑顔で写ってくれました。
セツブンソウは種から開花まで4~5年は掛かる希少植物で環境省では準絶滅危惧、長野県と千曲市では「絶滅危惧Ⅱ類」に指定しています。平成18年に千曲市指定天然記念物に指定され「戸倉セツブンソウを育てる会」の皆さんがボランティアで保護活動をしてきました。開花の時期は盗掘を防ぐため会の皆さんが交代で巡視活動をしたり、イノシシが荒らさないように周りの杭に木酢液を吊るすなど皆さんの努力がなければここまでは増えなかったかと思います。
たくさんの妖精に出会えて今回は大満足、「戸倉セツブンソウを育てる会」の皆さんに感謝しながら山を下りました。
3月もお彼岸過ぎから少しずつ暖かくなって下旬にはカタクリが見頃になりました。
群生地は当館からは歩いて5分程度の所にある八王子山という小さな里山の斜面です。
隣接する佐良志奈神社の境内から斜面に作られた歩道を登りながらの見学になるのでスニーカーに履き替えて出かけてみました。
群生地を訪れたのは3月30日。
神社の境内にも群生地があり花はちょうど見頃で淡い紫の花びらに染まっていました。ボランティアでカタクリを保護している「みどりのサポート隊」隊員の方の説明によれば境内のカタクリは移植して増やしたものとの事でした。
20年ほど前に八王子山の一分が道路の拡張により削られることになりましたが、そこに自生していたカタクリに愛着をもっていた住民が県に申し入れ境内に移植されたそうです。
たくさんの花の中には珍しい白い花びらのカタクリが2輪あると隊員の方がレーザーポインターで位置を教えてくれました。確かに白いカタクリが2輪見えましたが離れているのと逆光という事でスマホでは上手く写真が撮れず残念でした。
移植地の上が八王子山の斜面になっていてそこに咲いているカタクリは自生していたものです。見学用に「カタクリの山道」という歩道が整備されていて境内の脇から登ることができます。
すれ違いできないくらい細い歩道ですが間地かに花が楽しめるのがうれしいです。ヤマエンゴクサもちょうど満開でかわいいコラボレーションになっていました。
歩道を登りつめたところで繋がった八王子山登山道を下り1周15分程度で神社境内に戻りました。
ここのカタクリ見学は神社境内に面している事もあって容易に楽しむことができますが、盗掘禁止の看板を建てたり花が踏まれないように柵を設けるなど人の出入りがある場所特有の管理の難しさもあるようです。
隊員の方の話しではカタクリは種から花が咲くまで8~9年掛かるし、根を深くするので腐葉土でなければ育たないから増やすのは大変との事でした。また、これから環境が変わるとどうなるかわからないから将来カタクリは天然記念物になるかもと苦笑い。どうやら天然記念物に指定されるというのは良くない方向に向かっているからのようです。
今回はお天気の日に両妖精の見頃に出会えてたいへんラッキーでした。これもセツブンソウとカタクリが千曲川を挟んでちょうど反対側という近い位置にあるおかげかと思います。
春の妖精とは春の訪れとともに一斉に可憐な花を咲かせる短命な植物につけられた称号でスプリング・エフェメラル「春のはかないもの」「春の短いもの」からきているようです。花の時期は短命とは言えセツブンソウの寿命は10年、カタクリに至っては40~50年と言われ多年草の中でも長寿命なので、本体まで短命にならないように環境保全に努めたいものです。