残暑厳しい9月、上田城址公園内にある市立博物館に行ったついでに本丸入口の東虎口櫓門まで行ってみました。
東虎口櫓門は、春には櫓を桜が飾る城址公園では人気の撮影スポットです。
この日は平日で9月なのに32℃もある暑さだったので人は疎らでしたが、武将の格好をした若い役者のような人達がカメラの前でなにかセリフを言っており、観光客をもてなしする為に結成された「おもてなし武将隊」の収録を行っているようでした。
公園に隣接する観光駐車場は1時間まで無料です。

　柳町通りは旧北国街道沿いにあって石畳と昔ながらの建物を残した店舗があります。
地酒屋、味噌屋、蕎麦屋、甘味処、パン屋、レストランなど。店舗の数は少ないし通りも短いですが人気の店や宿場町という風情があって休日は混むようです。

メイン通りへ出る十字路の手前が映画「犬神家の一族」の最初のシーンで出てきた場所です。
向こうから坂口良子が来たんだ！ずいぶん昔だ。なんて思いながら十字路へ進むと、正面に「保命水」と彫られた石柱がありました。
見かけは井戸のようで、近くには水を入れたペットボトルを自転車の荷台にいくつも入れているおばあちゃんが居ました。
説明書きには、“ 明治14年に近くの海禅寺の境内にあった湧水を木管で引いたのが始まりで、町の生活用水として、また、北国街道を往来する人に喜ばれた ”とありました。

石造りの貯水槽から勢いよく流れ出る水の様子がいかにも涼しげで、手に受けて飲んでみました。
「やわらかいでしょう」とおばあちゃんに声をかけられ、確かにやわらかく、甘さもあるような…と感心していると、「沢蟹が居るんだよ！」と教えてもらいました。

確かに水はきれいですが、休日ともなれば観光客で賑わう街中で山里の沢ではないので驚きました。
「静かにしてると石垣から出てくるよ」とおばあちゃんが言うので、半信半疑で水面を見つめていると、沢蟹がでてきました！
石垣から顔を出したりひっこめたり、警戒しているようでしたが危険がないと分かったのか対岸の石垣へ移動しました。すると、そこから小さな沢蟹が顔を出しました。
「親子かね」とおばあちゃんは言います。
なにか言いたそうな感じでこちらを見て動かない親蟹は、私たちの住処だから荒らさないでと言っているような、それとも観光客相手の「おもてなし隊」かな。

　通りを一回りして帰るつもりで来ましたが、何気なく立ち寄った街中の井戸でこんな場面に出くわすとは思わなかったです。猛暑の午後に、なぜかここだけは涼しい風が吹いていました。
ずいぶん気の利いたおもてなしに出会って、親切に教えてくれたおばあちゃんにお礼を言って分かれました。
通りを進むとやっぱり暑い。見上げた通りの先には地酒の看板。これもある意味、保命水でしょうか。